「ぷっ、伊坂さっきからそればっか。 こうみえて俺、健気に伊坂のこと一途に想ってるんだけど」 不思議がる私を見て、葵くんは可笑しそうにこてん、と首傾げる。 「知ってるわけないよ……」 「うん、だと思った」 いつもより落ち着いた男のひとのような口振りに胸が落ち着かない。 間延びした返事とか、だらけたような語尾とか、私の知ってる葵くんじゃないないようで。 でも、葵くんじゃない、とも言いきれなくて。