いいかげんに気付きなよ。




卒業式でもないのに泣いちゃうなんてルール違反な気がして、気恥ずかしくなる。






「!?……伊坂あの、さ」







私はぐいっと涙を拭って、珍しく歯切れの悪い彼の顔を覗き込む。






「……葵くん?」






「ちょっと待ってて」



そう一言だけ言って、




がりがりと音が聞こえそうなほどのスピードで紙にシャーペンを滑らせはじめる。








無音の教室で10分もたたないころーー




「……終わった」





突然長い指から放り投げられた作文用紙がかさりと乾いた音をたてる。





「へ……?




も、もう?ちょっと早くない?」






「ん、まーね」