「だって、こんな狭い水槽じゃ行きたい所まで行けないし、泳いでも泳いでも永遠と同じ場所でぐるぐる回って、同じご飯を食べて、毎日知らない人間から視線を浴びて…。そんな生活、絶対嫌」
「…魚に同情してんの?」
実際、魚が何を考えているかなんてこちら側からすれば理解することなど不可能だ。
俺の返事に彼女はすっと目を細めて「そうだね…」と呟く。
「人間側からすれば、魚の気持ちなんてわかるわけないもんね」
背中まで伸びた黒い髪を揺らして彼女はただ水槽の中にいる魚たちを眺めていた。
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