その点、藤川はつきまとってくる事以外に度を過ぎる行動はしてこなかった。
今思うと、掃除当番を代わってくれたり、忘れ物を貸してくれたりとか、何かと気遣いができるやつだった。
「……もうこんなことしない。
鮎川さんがうらやましくてやっちゃった事だし、明日謝るわ。
……でも、蓮様が鮎川さんにだけやさしくするから、こんなことになるのっ!
お家までついて行ったこの子たちもみんな、蓮様とお話する機会がないからっていってたわ……っ!」
泣きじゃくりながら、そういった。
決して、柚々にしたことは許さない。
あの怯えた顔を思い出すたび、腑が煮え繰り返るおもいだ。
……対して、藤川がこの女たちの異常行動を止めてくれたこと、俺がいい加減な態度であしらっていたのも事実だ。
「……イヤな思いをさせたことは謝る。
でも、今後一切柚々と俺には関わるな。
わるいけど、好きな女傷つけたお前らに優しくするつもりなんてない」
「………っ」
藤川を筆頭に、目に涙を浮かべる女たちを冷えた目で見つめ、音楽室を出た。
