「俺らもそろそろ出よっか」
「あっ、そうだね…っ」
岩崎くんが、私の分のトレイも持って立ち上がった。
申し訳ない気持ちもあったけれど、せっかくのご厚意も無下にできず小さくお礼を言った。
そして、教室に戻ろうとするとき
出入り口が一つしかないため、蓮の前を通らなければならないことに気がついた。
だ、大丈夫…別に、普通にしていればいいんだっ。
他人のフリ、他人、タニン……
一歩、一歩と、どんどん近づく蓮との距離に心臓が高鳴る。
もう間もなく、テーブルの横を通り過ぎようとしたとき、ふと目線を上げたことに後悔した。
気だるそうに頬杖をついてこちらを見る蓮と、目が合ってしまった。
えっ…と……怖いです。
蓮は
眉間にシワを寄せ、怒っていた。
その目に吸い込まれそうになって、
慌てて目を逸らし、先を歩く岩崎くんについていった。
