「ありすちゃん、じぶんの事嫌いなんて言わないで?
ありすちゃんのお顔も声も、わたしは大好きだよ!
声が嫌いでおしゃべりが嫌いならー……おうた歌うのはどうっ?」
わたし、ピアノ弾けるよっと、ありすちゃんの手を引いて一緒にピアノの前のイスに座った。
当時、習い事でピアノをしていたこともあり、授業の中で特に音楽が好きだった。
いっせーのせ!で歌ってね、と音楽の先生のまねをする。
「は、はずかしいよ……」
「わたしも一緒に歌う!
んーと…きらきら星にしよう!
ほら、いくよ?いっせーのせっ……!」
ほっぺたを赤くしながら歌うありすちゃんの声を聞いて、
思わず息を呑んだことを覚えている。
綺麗な透き通っている、芯がある力強い声。
わからないけれど、わからないからこそ、
ありすちゃんはとっても歌が上手だった。
「ありすちゃん………きれい、だね……」
「……っ‼︎」
「そんなきれいな声、嫌いなんていわないで…?
わたしが自信もって、ありすちゃんの声が一番ステキだっていってあげるからねっ」
顔を赤らめた彼女は恥ずかしそうな、でもどこか嬉しそうに俯いた。
お人形さんのようにきれいな顔をする横顔に、いつの間にか涙は消えていた。
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ありすちゃん、元気かなあ。
あれから数回お話をしたきり会わなくなって。
突然、転校してしまったと、あとから知った。
今はきっととんでもない美少女になっているんだろうなあ。
それこそ、モデルや女優さんになっていてもおかしくはない。
いつかまた会えたらな、と淡い思い出を胸に眠りに落ちた。
