タイトル未定


「岩崎くん、ごめんねっ」

「うん、鮎川さんまた明日ね」



そう言うと眉を下げて、ヒラヒラと手を振ってくれた。





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カバンは一向に返ってこないまま。


前を歩く蓮の背中からは

なんの感情も読み取れない。



まさか学校で蓮から話しかけられるなんて思ってもなかった。



蓮と一緒に帰るなんて、何年ぶりだろうか。


人前で私とは関わらなくなってから、下校はいつもバラバラだったから。



岩崎くんには申し訳ないけど、蓮との下校でこんなに胸がいっぱいになることに幸せを感じた。



「家、」



ついに蓮の口から言葉が発せられた。


たったそれだけでも私は嬉しくて、俯いていた顔があがった。



「父さんがつくったアップルパイあるけど、」

「た、たべたい……!」

「……そう言うと思った」



少し呆れたように鼻で笑われたけれど

少しも嫌な気持ちにならなかった。



蓮のお父さんは超一流のパティシエさん。

小さい頃は毎日のように蓮の家へ遊びに行き

よく食べさせてもらってたなぁ。




「お、お邪魔します……」

「ん、」