岩崎くんがバッグを肩に担ぎ
私もバッグを持ち上げようとしたとき
「……なにしてんの」
いつの間にか、私の机の前に立ちはだかる蓮の姿。
どす黒い声で、私たちを威嚇する狼みたいに。
「い、岩崎くんが一緒に帰ろうって誘ってくれて……」
「……は?」
「もしかして、だめだった?」
怯える私と
不機嫌オーラを放つ蓮と
にこにこしながら、でもなぜか笑ってないような表情をした岩崎くん。
な、なんだろう……。
蓮が人前で話しかけてくるなんて。
それにしても、今のこの状況は
ひとことで言うとすれば、とても気まずい……。
「お前、」
「ちゃんと名前で呼んでよ、若瀬クン?」
け、喧嘩……?
いや、2人はいたって落ち着いてはいるけど
目の奥が笑ってない……
「……柚々、帰んぞ」
「えっ!?あ、ちょっとまっ……」
岩崎くんの話を全く聞く気がない蓮は
私のカバンを持ってスタスタと歩く。
