『 最後から、始まる。 』~卒業~ きみと過ごす残り1ヶ月


進路相談が終わった杉山と

廊下ですれ違った



杉山

先生と何話したんだろう



「気になる?」



すれ違い際

杉山の声が聞こえて足を止めた



「オレの進路、気になる?

それより
オレがまた先生になんかしたか
想像してた?

浅倉、エロいね」



間違ってなくて

何も言えなかった



「そんな恥ずかしそうな顔されても
何もしてないから」



どんな顔してるんだろう





顔が熱い

杉山が見てると思うと



「先生には
もぉ何もしないよ

先生、結婚するんだって…」



「え…」



結婚



杉山が発した2文字に

驚いた



「あ、コレはナイショね
まぁ、そのうちみんなわかるか…」



杉山は

どーってことなく言ったけど



大丈夫?

杉山



「ん?
浅倉、なんでそんな哀しい顔すんの?
もしかして、浅倉
清水のファンだった?」



やっぱり

相手は

清水先生なんだ



もし私が哀しい顔をしてるなら

それは

清水先生のファンだからじゃなくて



杉山に

同情してるからだと思う



「杉山…大丈夫…?」



「なにが?」



杉山は

ホントは

すごく…



「別にオレ
先生と結婚したかったわけじゃないし…

ただちょっと…
ただちょっとかわいいな…とか…
好きだな…とか…

けど、本気で好きだったよ

ガキだから
結婚とかぜんぜん考えらんねー
所詮、子供なんだよね、オレって…
思い知らされたわ」



杉山は

上手く走れなかった時の顔をしてた



本気で好きだったよ



その部分が

私の心に深く刻まれるみたいに

残った



「杉山…
走るの止めないでね

私、応援してるから…」



「は?浅倉に関係ないじゃん
走るの、オレだし…

浅倉のために走ってないから」



「そっか…
そーだよね…」



杉山は

私が応援したってダメなんだ



大好きな先生が

応援してくれなきゃ



走るの止めないでね

言わなきゃよかった



たしかに

私には関係ない



また杉山が

走ることを止めるんじゃないかって



止めてほしくなくて

そんな事を言ってしまった



浅倉のために走ってないから



杉山がいなくなった廊下

しばらく動けなかった