『 最後から、始まる。 』~卒業~ きみと過ごす残り1ヶ月


「浅倉、また見てただろ」



机から顔をあげたら

杉山だった



「え?私?何も見てないよ!」



今度は

心当たりがない



もしかして

ホントに

先生とキスしてたの?



5限の社会が眠すぎたけど

目が覚めた



「浅倉って
オレのこと、いつも見てるよね」



「え!なに?見てないよ!
ホントに!ぜんぜん!」



ぜんぜん?

それは嘘かも



見てる

ちょっと見てる



「オレの勘違いか…?
恥かかせんなよ」



杉山が

少し照れて

かわいいな…って思ってしまった



「次、移動教室だよ」



あれ?

みんないない



杉山

私を待っててくれたのかな?



私の机に無造作に置かれた

骨ばった大きい手



その隣にある

私の手



私の手は

握らないんだ



ドキドキして

ちょっと

ズキズキした



「杉山…
先生のこと、好きなの?」



杉山の喉が微かに動いた



「うん、好きだよ」



誰もいなくなった

教室



杉山の声が

自信なさそうに

響いた



「そーなんだ…

がんばってね…」



言った唇が

震えた



こんなにかっこいい

杉山を

見たことなかったから