「……本当に、葉月は風音にデレデレだねぇ」

葉月をからかうように、颯は閉じた扇子を口元に当てながら意地悪そうに笑う。

「どこが!!」

イヅナと同じ場所、声量で言ったものの颯の声は葉月の耳に届いており、葉月は顔を赤くしながら颯の方を向いた。無言でニヤニヤと笑う颯に向かって、葉月は恥ずかしさから自分の扇子を颯に投げ付ける。

「……とりあえず……無事で良かったわ」

イヅナが微笑むと真冬は風音に近づき、手に持っいた扇子で軽く風音の頭を叩いた。

「葉月、お前のこと凄く心配してたよ。もちろん、オレも……」

無表情の真冬の本当の気持ちを読み取った風音は、「ごめんね」と微笑む。

「……風音、あの悪霊は……」

「あぁ、浄化したよ!」

颯の問いかけに、風音は自信たっぷりと答えた。



「……もう少し、イヅナたちとお話したかったな……」

翌日。外が暗くなりかけていることもあり、あれから挨拶をしてすぐに元の世界に戻ってきた風音は、通学路を歩きながら昨日のことを思い出していた。

家に着き、家の中に入った風音は「ただいま」と言うとリビングが騒がしいことに気が付き、風音はリビングへと向かう。

「あら、風音……おかえりなさい」

「風音!勝手に来てしまってごめんね」