「……あなたは?…………悪霊、ですか?どうして、ここに?」

「それは、こっちのセリフだよー!どうして、彼女が……風音がここにいるの?」

男性は志奈を睨んだ後、風音に近付くと風音を蹴り飛ばした。風音の体は吹き飛び、そのまま地面に叩き付ける。

(…………あれ?痛く、ない……?どうして……?もしかして、夢の中、なのかな?それなら記憶もないのに、ここにいることに納得はいく……)

体を起こしながら、風音はいつの間にか自分の両手に握られていた扇子に目を移した。

(…………この扇子……確か、おじいちゃんが持っていた……でも、手に馴染むな。初めて持つはずなのに…………)

「……君、今幸せ?」

風音の目の前に立ち、男性は嘲るように笑う。

「うん。幸せだよ……おじいちゃんも真冬もいるし……!」

(あれ?僕……本当に幸せ、なの?1人だと、何か物足りない……)

モヤモヤする気持ちを必死に隠しながら、風音は笑顔を作った。

「そっか。じゃあ、ボク……今から、君の祖父を殺しに行くね」

にこりと笑い、男性は手に持っていた剣を風音に突き付ける。

「それとも、君から消えたい?そうだよね!幸せなまま死にたいもんね!」

無言のままでいる風音を無視し、男性はそう言うと剣を振り上げた。

「……させません!」