「……ここは、颯の家の前だ……さっきまで、僕は何をしてたんだっけ?……えっと、確か……」

いつの間にか颯の屋敷の前で立っていた風音は、訳も分からず首を傾げた。

「風音さん!」

立ち尽くす風音の前に、風音と同じターコイズグリーンの髪を1つに結んだ、和服に身を包んだ女性が姿を現す。

「誰……?」

風音が首を傾げると、女性は「私は、志奈(しな)と申します!」と真剣な顔で風音を見つめた。

「……え?君が志奈……?志奈って、颯の妹だよね?」

「はい。直接会うのは、初めてですね……風音さん、あなたがどうしてここに来たのか……覚えていますか?」

「…………覚えてない。学校が終わって、おじいちゃんの家に向かってたはずなんだけど……気付いたら、ここにいた」

「……そうですか……では、どうしてお兄様……颯の名前や関係を知っているのですか?」

「……え?…………分からない」

風音は志奈の質問に、不思議そうな顔をすると首を傾げる。

(やっぱり、風音さんの記憶が曖昧になっていますね……どうしたものか……)

「……ん?君の記憶も変えておくべきだったかな~!」

志奈が途方に暮れていると、その声とともに風音と志奈の近くに男性が現れた。