儚く甘い

「これ、着ろ」
「え?」
達哉はまだ笑っているみわに、自分の上着を羽織らせる。
「大丈夫だよ」
「いいから。ポケットに水も入ってるし。」
「ふふっ」
まだ思いだして笑うみわ。
「ほら」
みわが袖を通すのを手伝う達哉。
「貸す。明日、返せよ?」
「明日?」
「そう。待ってる、ここで。」
初めてだ。

いつもみわが一方的に達哉を待ち伏せして、声をかけていた。
それが初めて、達哉から次の約束をしてくれたような気がして思わず微笑む。