思ったよりも簡単に行き過ぎたことに少し動揺する。

みわは一瞬体をこわばらせてから、今度は慎重に手すりの向こう側へ足を降ろした。

「なぁ」

急に後ろから声をかけられて、みわは全身を跳ね上がらせる。

「悪い、悪い。この状況で驚かせて」

みわがゆっくりと振り向くと手すりの反対側、ついさっきまでみわがいた場所に一人の男が立っていた。

確か同じ大学、同じ学部の生徒だ。
でも、名前も知らない。