── 私のこと華ハナって呼んだわよね!?



華花の幸せそうに笑う顔が頭に浮かび上がる。

ばあさんと会えて、話して、名前を呼んで貰えてあんなにはしゃいで喜んでたのに。


あいつ、また周の胸で泣いてんのかな。







「じゃ、終わったら電話して」


式場に俺と璃香子を下ろして、兄貴が運転席から手を振って車を発進させた。



「璃香子、寒くねーの?コートは?」

「黒いの持ってなくて……」


璃香子の格好は、長袖の黒いワンピース1枚だ。お腹も出てきてパッと見、妊婦と分かるようになってきたのに、何でこんな薄着なんだよ。



「中入るまで俺の着とけよ。ったく、兄貴も気がきかねーよなぁ、自分の嫁なのにさー」


上着を脱いで、璃香子の肩に乗っければ璃香子が眉を下げて静かに微笑んだ。



「泰良くんは優しいよね」

「はぁ?」

「華ちゃんも言ってたよ、すごく優しいって」

「……あぁん?」

「華ちゃん、大丈夫かなぁ…。おばあちゃんが心配で日本に残るくらいにおばあちゃんっ子だったんだよね?」


そういえば、そんなこと言ってたなー。なんて、ぼんやりと華花とのメッセのやり取りを思い出す。



「華ちゃんの親バンコクだっけ?もしかしてさ一緒に行っちゃうのかなぁ。まだ小学生だもんねー……」


白い息を吐く璃香子が、そう小さく呟いた。