「もう!遅いわ泰良。待ちくたびれたわよ!」
家に帰ると黒い車が止まっていて、その窓から華花が顔をひょこっと出した。
「学校って送ったろ?」
「いつもはもっと早いじゃない!?」
「あぁ?学校行ってねぇお嬢様に言われたくねーんだけど」
「……ひ、ひどいわ!気にしてるのに!」
「これ以上、サボ……早退すんなってババアに言われてんだよ!」
「まぁ、お母様に!?」
「様って気持ちワリーな……」
「泰良さま、どうぞ」
「んぁ……?」
ドアが自動で開いて周の声が聞こえて、後部座席に乗り込むと車が静かに発進した。
今日は華花のばあちゃんのところに行くのだけど。なんで華花ん家の車かというと、自転車の2人乗りは違反だし危ないと周が華花に言ったからだ。
「うえー、こんな高級車はじめて乗った」
磨き上げられたピカピカのボディ、高そうな黒い艶のあるシート。ぜんぶ黒窓。
車内をキョロキョロと見渡せば、ミラー越しに周と目が合った。
「お久し振りです、泰良さま。お元気そうでなによりです。安心しました……」
運転席に座る周がそう口にする。棒読みだけど周り醸し出される空気がやけに暗い。
あー、あれか?あの事か?
「前に殴ったのは謝んねーよ!子供だからって馬鹿にしやがって、あん時のあれはお前も悪ーからな!」



