急いで上着を羽織って、部屋の扉を開けて静かに階段を駆けおりる。
周に気付かれないように、玄関の鍵を音を出さないようゆっくりと回した。
白い息と真っ暗な空が広がる。ひんやりとした空気が気持ちがいいくらいだわ。
とても滅茶苦茶だけど、今までこんなドキドキすることなかった。
「泰良っ!」
家の庭を走って、フェンス越しの泰良達が目に入る。
「えー、華ちゃん!出てきて大丈夫なん?」
「ははっ、マジできやがった」
目を丸くする赤司と、吹き出すように笑い出す泰良。こんな陽気な泰良はじめてだわ。
「とても綺麗だったわ!!で、でもどうして花火をあげたの?」
「泰良がさー、トランプボロ負けして、華ちゃんをびっくりさせる!って罰ゲーム」
「びっくりしただろー?」
「えぇっ?な、なんなの、その罰ゲームは?……でも、とてもびっくりした!胸がすごくドキドキして、ワクワクしたわ!」
顔がちょっと赤い泰良が目を細めて笑うのが、暗がりな中でも分かった。
フェンスの間から泰良の手が伸びてきて、頭をくしゃくしゃに撫でられる。
周よりは細いけど、私よりずっと大きくて男の子の手をしていた。



