「今日は田渕さん、機嫌がいいみたい」
と、他の若い女の職員がそう言いながら、芝生のある庭の方に案内してくれる。
どこまで立派な施設なのか、建物の真ん中に公園みたいな中庭まであるらしい。
「ほら、今日はあそこで日向ぼっこしてるみたい」
ベンチに座るのは、着物姿のばあちゃんだった。背筋も伸びてピンとしてるし、身なりも相当綺麗にしている印象だ。
どこか体が悪いわけじゃねーのか?
「それでね、もしかしたら田渕さんあなたのこと……」
「おばあさま!」
職員の女の話を遮って華花が走り出して、そのばあさんの前に座って手を握る。
「おばあさま。会いにきたわ!ごめんなさい、ずっと来れなくて……」
「あら、ふふふ。可愛いお嬢さん。お名前は何て言うの?」
「……………華花よ?」
「素敵な名前ねぇ。華花ちゃん、あなたは何年生なのかしら?」
「……………… さ、3年生」
これ、まずいんじゃね?そう思った時にはすでに遅し。
「時々、お孫さんの話はするんだけど。覚えてなかったかー……」
女が"しまった"とばかりに掌を顔に当てて眉を下げた。



