「ここでいーのかよ?結構近いじゃん」

「信じられない!泰良、ひどい!最低だわ!!」


華花のばあちゃんがいる施設ってやつに到着して自転車を止める。
歩き出した俺を追いかけるよう、目くじらをたてた華花が甲高い声をあげた。



「施設っていうからどんな(とこ)かと思ったら、きれいじゃねーか」


まだ新しい2階建ての建物はレンガ風の真新しいもの。
昔、うちのばーちゃんが入ったとこは、もっとこうボロくて古くて独特の臭いがするところだったけど。

金持ちってやつは、入るとこが違うんだな。



自動ドアが開くと受付があった。
そこの事務のおねーさんが眉を潜めて露骨に不審そうな顔を見せるけど。平日の昼間に、金髪の中学生とあきらかに小さい女の子がいるのだから当たり前だろう。



「あ!お前、田渕でいいんだっけ?」


華花に聞けば、勢いよく縦に頭を振った。



「田渕っすけど、コイツのばあちゃんいますか?」

「あ、あぁ。もしかして、田渕さんのお孫さん?」


田渕と名乗るとすぐに話が通じたようだ。
ちょっと待っててね、と受付のおねーさんが立ち上がり中に入っていく。




「おばあさまがね、泰良のお家のケーキが大好きだったのよ」


華花が頬を赤色に染めて恥ずかしそうに笑う。
確かに母ちゃんがそんなこと言ってた気がするな。