「きゃぁぁぁぁっ!泰良っ、落ちる!落ちちゃうわっ!!」
華花が持ってきたメモの住所を見たら、そんな遠くない場所だからチャリで行くことにいたのだけど。
走り出すと、後ろの台に乗る華花がギャーギャーと騒ぎ出す。
「あぁ?うるせーよ!」
「だ、だって、自転車なんてはじめてなんだもの!」
「はぁ?お前、まさか自転車乗れねーの?」
「なによー、悪い?だって、周が危ないって、」
「ふはは、マジかよー。自転車くらい乗れねーとヤバイって。おら、ちゃんと掴まってねーと落とすかんな?」
「いやっ!」
ペダルを漕いで進んでいくと下り坂に突入した。ふわりと体が一瞬浮いた後、スピードが一気に増して少しひんやりした風を切っていく。
制服をちょこんとつまんでいた小さな手が、今度はお腹にギュッと回された。
お嬢様の顔は見えないけど、震える手に固まった体。きっと真っ青なんだろうと簡単に華花の表情が想像できて、ちょっとだけ笑えた。



