周が部屋から出ていくと、広いゴージャスな部屋に俺とお嬢様の2人きりとなる。
向かいに座るこのお嬢様は確か小学3年だっけ?
大きな猫みたいな瞳がジッと俺を捉えるから、少し緊張するな。
艶のある腰まで長さのある黒髪は、ふんわりとカーブを描いて。りぼんでハーフツインテに縛られている。
まだまだガキだし、性格はともかく、顔はまぁ可愛い方だと思う。
静かだな。カタカタと奥で周がお茶を入れている音が聞こえる以外、誰の気配も感じない。
「なぁ、お嬢様……」
「華花よ!」
「……華花…の両親とかさ今家にいねぇの?」
「うん、パパのお仕事でバンコクに行ってるの。本当は私も一緒に行く予定だったんだけどね……、残ることにしたの」
「へー、何で?」
「……」
目の前のコイツが、頬を膨らませて黙り込んでしまった。
ヤバっ、親のことは地雷だったか?
「お待たせしました」
丁度その時、周が皿に乗せたケーキとお茶を持って戻ってきた。
静かに紅茶を差し出されるけど。大丈夫だろうか。毒とか入ってねーよな?と、少し心配になる。



