「はぁ?そ、そんなわけ、ねー……し」
美魔女の言葉に自分の頬がボッと赤なるのが分かったから、慌て右手で隠して足元に顔を向けた。
「じゃぁ、華花が海外へ行ってしまって。私が貴方と華花を会わなせなくても問題ないわよね?」
美魔女を見なくても分かる。くっそ、こいつ絶対に俺の気持ちを確信して笑ってやがる。
あんな世間知らずのお嬢様、俺なんかと離れた方がいいのは分かってるけど。
──あなた。だぁれ?
出会いは最悪だった。人のこと玄関で吹っ飛ばしておいて謝りもしねぇ子供。
──もう!私のケーキがグチャグチャじゃない!
自分のことしか考えてない、小さなワガママお嬢様。
──男の人を慰めるときは、頭を撫でるのよ
自分勝手で人の話聞かねーし。
ころころ変わる表情に、いつも振り回された。
──っひく、な、泣きたくなんてなかったのに今日は笑っていようって決めていたのにぃ……
声を出して泣く姿に、慰めかたが分からなかったけど。ガキのくせに、大きな瞳から溢れる涙は凄く綺麗だった。
──そうね。いつかお嫁さんになりたいわ!
俺を好きだという駄々漏れの気持ちも、悪くないっつーか、正直嬉しかった。
──た、泰良ぁ…。お家うち、か、帰りたいよぉ…
ボロボロになったあんな顔、もう一生させたくねぇ。
なんだよ、俺にどうしろってんだよ。



