さっきまで沈んでいた華花の瞳が、パチリと大きく見開いた。



「お、お誕生日?泰良のお誕生日って8月よね?8月31日!」

「お、おぅ。よく知ってんな……」

「ふふっ、当たり前じゃない!」

「……なんか、それ(こえ)ーな」


「泰良っ!約束よ!来年の泰良のお誕生日、一緒にお出かけしたいわ!全力でお祝いをさせてちょうだい?」


でた、指切りだ。小指を差し出されて、その小さな指に自分の指を絡めると。桃色に染まった頬が幸せそうに笑うから、華花を愛おしく感じた。

ただの子供騙しの口約束なのに、指先から伝わる華花の温かさに心臓がギュッと締め付けられる。

マジでなんだよこれ。幸せってうつるものなんかな──?







「映画といったらコーラとポップコーンよね!私、あの大きなペアセットがいいわ!」

「分かったよ、買ってくるから。ここで待ってろよ!どっか行くんじゃねーぞ?」

「なによそれ!もう、子供扱いしないでよ!」

「十分、子供だろ…?はっ、映画も子供料金だし」

「早く買ってきてよ!始まっちゃうわ!」


上映時間が近付いて、ポップコーンを買いに行かされる俺。

急に偉そうになりやがって。ったく、本当にしょーがねーな。
華花の言う通り売店の列に並んでペアセットを買って、やっとの思いでその場所に戻る──と。





「華花?あれー、あいつ何処だよ?トイレか?」


華花の姿が忽然となくなっていた。
辺りを見渡しても、あの小さなお嬢様の姿は見当たらない。


そのタイミングでポケットのスマホの着信が鳴り響く。画面には、華花の名前が表示されていた。





「あー……。華花、お前さ今どこに──、」