それは、きみのあまいくせ








横目でこちらを見る七川から、ゆっくりと視線を逸らす。

いつも上に立てないからこの瞬間だけは、有意義だ。

だからついつい、苗字で呼んでしまう。

得意気に口元が緩んでしまったわたしに「なに、その顔」と不満げに言われる。

覗き込んでくるその黒髪が夕陽をさらりと透かす。

黒髪から覗く、その綺麗な目がオレンジに染まっている。

首を引くように立ち止まるわたしに合わせて、彼も立ち止まった。

「聞いてないだろ」

と、頬を潰すように顎を掴まれる。

決して乱暴ではないけど、少しだけむ、としつつも彼はそのまま背中を曲げる。

七川は身長が高い。

わたしだって、一応15……盛って、6センチあるけれど、七川は身長が175センチくらいある。

そんなこと、いま考えたって仕方ないけれど、七川がわたしに合わせて身体を屈めるたびに、いつも高いなと思う。

顎を掴まれたわたしの少しだけ突き出た唇に、甘噛みするように唇を重ねる。