「なに?」

「え?」

「なんでこっちばっか見てんの」

「い、いや……あの、ここの問題がわからなくって!」

慌ててノートを指差せば「ふーん」と、わたしとノートを交互に見て、「どこ」と彼はこちらに少しだけ身を寄せた。

肩が当たる。それだけで、わたしは瞬きを繰り返してしまう。

学校の自習室を借りて、いまは試験前の勉強をしている。

が、わたしは隣の彼氏のせいで、正直、勉強が二の次になっていた。

だって、こいつ女子並みのいい香りがするし、パーソナルスペースどうなってるんだってくらい、いっつも近いし、いちいち発する声だってめちゃくちゃいい。

冷静になれ、と思いながら頭の中で何度も怖い映画や恐怖ドラマを思い出しては、すん、と気持ちを整えるが、それでもやはり、この男は無駄に格好いい。

彼氏、という称号がついてからは尚更そう感じている。

つまり、色眼鏡で見ているのかもしれない。