わたし、篠木(しのぎ)ゆるには、同じ年の彼氏がいる。

わたしたちの出会いは中学生一年生のときだったけれど、こうして付き合い始めたのは高校生に上がった頃。


高一の体育祭のとき。

違うクラスだった彼が、男の先輩と話しているわたしの腕を引いてこう言った。


「俺の知らない顔すんなよ」


わたしはその時、体育祭実行委員で、その仕事について話していただけだったのに、ただの『ともだち』だった彼は怒っていた。

それはいわゆる、


「あんま遠くに行かないで、俺のそばにいてくんない」


嫉妬である。


ほとんど無口で、何事にも興味がなさそうで、モテるくせに恋愛っ気ゼロの彼が、

まさかわたしを好きだなんて考えたこともなかった。

伏し目がちに隣に座って、ノートにシャーペンを走らせる。

睫毛の長いその目元に、綺麗な黒髪がさらりとかかっている。

高くて形のいい鼻も、血色のいい唇も、パーツとしては最高峰。

正直、わたしには釣り合わないくらい、彼は格好いい。