それは、きみのあまいくせ






涙目になって、「っも、むり」というゆるの声も、多分この世で一番、可愛い。

嫌がっているくせに、縋るように俺の制服を掴んで、あげく。

背伸びをしてしまう、そのくせはあまりよろしくない。

今度は俺が、とまらなくなる。

あくまで、俺はゆるを繋ぎとめるのに十分なあたたかさと居心地のよさで、拘束しなくてはならない。

これ以上にないくらい甘く、

これ以上はないとばかりにそっけなく。


火照った彼女の下唇を甘噛みしながら離すと、顔を逸らされる。

「っ、なな、」

かわ、という声が掻き消えたので、「祈」と言えば、さらに恥ずかしそうにした。

ゆるは、俺の名前を呼ぶように促すといつもいろんな可愛い〝くせ〟を見せてくれる。

音もなく唇をはくはくと震わせるのも、

動揺するように瞳を揺らし、睫毛を揺らすのも。