篠木ゆるは、中学校一年生の時に出会った。
同じクラスでもあまり話す仲ではなく、三学期の最後の席替えで隣の席になったとき、初めて名前を呼ばれたくらいだった。
地毛が明るめの茶色をしている彼女の雰囲気は明るく、誰に対しても平等で、分け隔てなく色んな人と仲がいい。
正統派ないい子。そういうイメージ。
中学二年生で再び同じクラスになり「一年生のときは最後しか話せなかったから、嬉しい」と他意なく喜びを伝えられて驚いた。
距離感の近い子だな、と思った。
そこからはなんとなく話すようになって、彼女のことをより知った。
見た目は甘いものが好きそうなのに、実は激辛料理が平気だったりとか。
きちんとしていそうなのに、朝は起きるのが苦手で、一度、授業中に起こそうとした俺を「まって、おかあさん」と呼び違えたりとか。
暫くクラスメイトに「篠木のおかあさん」といじられたことはいただけなかったが、知れば知るほど飽きない彼女が、俺にとっての退屈凌ぎになっていた。