ゆるりとした拘束に、どきどきしていた胸の奥がさらにきゅ、と苦しくなった。
ああ、もう本当にゆるせない。
淡々としているくせに。
何にも興味なさそうな表情をしているくせに。
「ひとの気も知らないで……」
七川はいつだって、甘い手のつなぎ方をする。
絶対に、ふりほどけないような。
そんな。
きっとこの無自覚な甘えたは、
この男の〝くせ〟なのだ。
ただ、手をつなぐだけなのに、そこに七川を感じさせるから。
「なに。どうしたの、ゆる」
今日こそは怒るつもりだったのに、なんだかんだいっつも上手くいかない。
「っな、なんでもない」
でも、いい。また明日がある。
明日、七川がまた同じことしてきたら怒ってやるんだから。
それで『ごめんね、ゆる』って絶対に謝らせてやるんだから。
今日はひとまず、手をつないだまま帰ることをゆるそう。
わたしの顔を見て、「そう」と頷く七川がすこし嬉しそうでかわいいから、
今日は見て見ぬふりをしてあげる。