卒業したらきっと。

「こ、小町ちゃん……!?」


芽衣さんは驚いた様子だった。


だけどとにかく走った。


今日みたいに。


それからしばらくして、公園が見えなくなったところ。
横断歩道で私は足を止めた。


「……………っ」


思わず泣き出す。


信号は赤。


その場で立ち尽くして声をあげながら泣いた。


それから数十秒。

信号が青になった時。


涙で視界がぼんやりしながらも渡る。

今だけなら───泣いてもいいかな。


泣きながらもなんとか渡りきった私はまた走った。

早く家に帰りたい………っ。


早く雪くんを忘れたい………っ。


だけどこういう時に限って頭に浮かぶのは雪くんのことばかり。

また、視界がぼんやりしているせいで道端に落ちていたハンカチらしきものに気付かなかった。


慌てて避けようとしてもかなりの無難の技で逆に私が転びそうに。


今日はとことん災難だな。


なんて考えながら目をギュッと瞑って転んでも良いようにした。


「危ない………っ」


誰かのそんな一言で私の腕が掴まれる。


瞑っていた目をゆっくり上げる。

またそのせいで涙がボワッと頬を蔦る。


手で涙を拭って何度か瞬きをした。

どうやら私は誰かさんに腕を掴んでもらい、何とか転ばずに済んだ……らしい。


「だ、大丈夫………?」

そう言う誰かさん。


誰かさんの声や顔を見る限り男子だった。

年齢もとても近そう。

「……は、はい。」


泣いているのを見られたくない私はうつ向いてお礼を言った。

こんな態度でとても申し訳ない、けど………っ


「……もしかしてだけど、

海堂、さん?」


突然、そう名前を呼ばれ私はバッと顔を上げた。


だけどその男子を見ても思い当たる節は見つからない。


「………えっと、どちらさん……で……」


そう聞くとその人は顔を真っ赤にさせて名前を言った。


「…な、七瀬……雅……」

「ななせ……みやび……?」

名前を聞いても思い当たる節は無い。


「同じクラスの、人………?」

そう聞くと七瀬くんはまた顔を真っ赤にさせた。


「いや、クラスは違うけど……学年は一緒……隣の3ー2のクラス……。」


隣のクラスの人がなんで私のことを……


謎が増えた気がしてまた質問をした。


「何で私のことを………?」


いつの間にか涙は引っ込んでいた。


「その……………

今から俺が言うこと、信じてくれる?」


目線を下にして顔が真っ赤な七瀬くん。


「………うん(?)」


何を言うのかと検討もつかない。