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「大丈夫?俺が持つよ。」


「えっ?それじゃあ……やっぱ美南くんは優しいね~」


「そうそう!この前も私のこと気にかけて心配してくれたのよ!」



「違うでしょ!美南くんは私のためにやってくれてるだけよ!」

そんな声が廊下から聞こえた。


美南くん───通称、この学校の王子的存在。

誰にでも優しくって、成績も優秀で、運動神経も抜群。


先生までもが尊敬しちゃうくらい人気者。


そんな美南くんに恋なんてしちゃっている私。

いわゆる一目惚れっていうもの。


サラサラな髪にくしゃっと笑った顔。


髪を耳にかける仕草も、全部が好きなんです。


そんな私と美南くん。


接点なんて同学年で、同じ誕生日ってことぐらい。


美南くんと同じ誕生日って気づいたときはとても舞い上がったのを今でも覚えている。


ただ、眺めている──そんなことさえ出来れば後は何も望まなかった。


じっと美南くんを見ていると、パチッと目があった。


そんなことさえ奇跡。


だけど私はあまりにも自信というものがないため、すぐに逸らしてしまった。

逃げるように教室に戻る。


そこにはニヤニヤとした女子が3人立っていた。


「こっちゃん、どうだった~?」

そう言ったのが日美(hibi)。


ちなみにこっちゃんというのが私。


小町っていう名前だからこっちゃん。


さらに言うと、日美のあだ名は卑弥呼。

最初の二文字が同じだからって男子に付けられたあだ名。

それに日美の趣味が占いでそれが絶対に当たるからだとか………


今じゃクラス全員が卑弥呼様~と呼んでいる。

「まさか、今日もダメだった?」


日美に続いてそう言ったのが莉乃(rino)。


「とか言いながら~?」


疑いの目を向ける蒼(sou)。


「目…………あっちゃった……」

恥ずかしくて、目線を少し下に向ける。


「え~!こっちゃんやるじゃん!」