「美紅、こっちだよ」

「うん」

いつも私を引っ張っていってくれるのは―。


「く、みく 、美紅っ!」

「う、うーん…」

しゃっとカーテンを開ける音が聞こえて部屋の中に柔らかい日が差してくる。

そしてゆっくり目を開けると…。

「おはよ、美紅」

優しく笑った彼が目に入った。

「おはよう、柊くん」

目を擦りながらゆっくり起き上がると柊くんが布団を持ち上げてくれた。

「もう、朝ご飯は用意してあるから着替え
て降りてきなよ」

「うん、分かった」

私の名前は如月 美紅。

高校2年生。

朝に弱くて不器用でさっき起こしに来てくれた柊くんがいないと私はダメ。

柊くんっていうのは私の大好きな幼馴染の渡瀬 柊斗。

お父さんは単身赴任、お母さんは朝から晩まで仕事に奔走している私の両親。

それなのに私は全く家事ができない…。

そんな私のために柊くんはうちの家事全般をやってくれている。

「みくー?」

階下から聞こえる優しい声に返事をする。

「はーい!今、行くねー!」

急いで制服に着替え、下に降りていくと―。

「完璧な朝ご飯!」

まさに理想のバランスの和定食。

こんなの私には作れないなー。

「柊くんのお嫁さんになる人は大変だね」

「…」