その数日後、後藤家からバーベキューに招待された。

家を建てる時に騒音で迷惑をかけたから、とのことで、我が家の他にも、ふた家族ほど集まったが、子供は私と貴一だけ。

なんて美味しいお肉…内心、隣に家が建つときの音が少し厭だったけれど、そんなことを思ってゴメンナサイ!と現金にも思ったものだ。

貴一は小声で、

「なぁ、前から気になってたけど、この辺で明菜ちゃんの他に子供を見たことがないんだ。なんだか、お年寄りばっかりで…」

そう尋ねてきた。

「うん。この町内に義務教育の子供はずっと私だけだったよ。他の町には一応居るけど、小学校は1学年1クラスだったし、中学も、3つの小学校からかき集めても、4クラスしかないって聞いてる」

「そうなんだ…ちょっとビックリだな」

「あ。今、とんでもない僻地に来てしまった!って思ったでしょ?この辺りはね、一応県内では一等地なんだよ?私も初めて来たときは、自動改札機がないだけでなく、地下鉄も摩天楼も、高速道路すらないことにビックリしたけど。いわゆるドーナツ化で、まちなかより郊外のほうが人は多いみたい」

「いやいや!別に僻地なんて思ってないし、俺は明菜ちゃんが居てくれて心強いから…」

「呼び捨てでいいよ。仲の良い友達はそうだし」

「わかった。じゃあ、明菜ね」

そう言ったものの、思えば、男の子からファーストネームで呼び捨てにされるのは、これが初めてだった。