「やだなぁ、生まれも育ちも日本だよ!言葉の違いっていうのは、私は標準語しか知らないのに、周りは訛りも強いし、よくわからない方言も多かったから。何で帰国子女だと思ったの?」

「いや…さっき歌ってたの聞いて、やけに流暢な英語だから、そうなのかなと…」

なるほど。

「私、英語なんて全く話せないよ。小さい頃から古い洋楽に親しんできたから、聞こえたままに歌ってるだけ」

「へぇ…耳がいいんだ。前は何処に居たの?」

「東京。でも今はもう、すっかり田舎娘になりました。そういえば、何処から来たの?」

おもむろに尋ねてみた。

「俺は宮崎だよ」

「それは遠路遥々だね!ここは寒いし豪雪地帯だから、最初の1年はツラいかもしれないけど、すぐ慣れるよ。住めば都はるみって言うでしょ?」

「うん…今、まさに凄く寒いよ」

少年は、すっかりリラックスしたようだった。

言うまでもなく、その少年こそ、まさに貴一のことである。