「貴一…」

「だってさ…明菜って、数学で0点取ったことあるもんなぁ」

はい?

溢れそうになった涙が、一瞬で引っ込んだ。

「俺、あの時はビックリしたよ!身近に0点取る人が居たことにもビックリだけど、よりによって成績優秀な明菜が、なんで数学だけそんなに悪いのかって」

「あのー…今なんでそんな話になってるのかな?」

「ん?バカがどうのこうのって話してたから」

「え、ちょっと待って。貴一は私のことずっとバカだと思ってた…?」

そう言うと貴一は笑って、

「思ったことないよ!むしろ、あんなに酷い数学をカバー出来るほど、他の科目は点数良かったんだから、大したもんだと思ってた」

いつものように全く話が逸れていった二人だが、

「とにかく、お互いバカじゃないんだから、早く行こう?」

ようやく私は素直に頷いた。