気絶した男を軽く蹴飛ばし、少女はパンパンと埃を落とすように手を叩いた。
・・・弘人はあんぐりと口を開けて、その様子を見ていた。

「ちょっと、そこの貴方!」

声を上げた少女の言葉に、弘人がぐるぐると辺りを見回す。
しかし次の瞬間、「貴方ですわ!」という少女の声が聞こえて、弘人は少女を見上げた。

「そろそろ、起き上がったらどうですの?
男性ならこれくらい倒せるようでないとダメですわよ!」

少女は仁王立ちをして、弘人が起き上がるのを待った。
いそいそと立ち上がり、弘人は少女を見下ろす。
・・・細く華奢な体つきゆえに想像できないが、弘人はそこそこ背が高い。
いや・・・目の前に異様なほど小さい彼女がいるから、尚大きく見えるのだろうが。

「貴方、陽琉高等学園の生徒ですわよね?」

「え?あ、はい・・・」

「名前は何ですの?」

「え?ぼ、僕は桐生 弘人と言います・・・」

彼女を見下ろしながら、しかしおどおどと答える弘人を下から睨むように見上げ、少女は腰に手を当てる。

「私の名前は白蓮堂 姫香(びゃくれんどう ひめか)!
いいですの?よくお聞きなさいヒロト!」

「は、はい」

「貴方のせいで、ギリギリ間に合うはずだったHRに完璧遅刻ですわ!
罰として、今日の放課後生徒会室へ来ることを命じますわ!」

「はい・・・。えぇぇ!?」

「えぇぇ!?じゃありませんの!返事は!?」

「・・・はい」

結局素直に頷いた弘人に、姫香は「いい返事ですわ」と頷く。

「いいですのヒロト!来なかったら明日から
毎日あの男性を送りつけますからね!」


「え!?そ、それは嫌です・・・!!」

「ですわよね!?でしたら命令に従いなさいませ!」

大きく胸を反らした少女に・・・否、姫香に、弘人は「はぁ」と素直に頷く。
誇らしげに少女は不敵な笑みを浮かべ、「では、今日の放課後に!」と奔っていった。