「そうそう!その素直さが大切ですわよ♪」

姫香がウインクして、弘人の心臓を跳ね上がらせたのは言うまでも無い。
バクバクする心臓を押さえ、弘人はえへへ、と笑った。

「じゃあ、僕これで・・・」

「ヒロトっ!」

「はい・・・?」

立ち去ろうとした弘人は振り向き、頬に柔らかい感触を感じて停止した。
・・・姫香が、弘人の頬にキスをしている。
それを認識するまで数秒。

「・・・ッ・・・!!?」

驚いて真っ赤になった弘人を横目に、凛が「わぉ」と呟く。

「何驚いてるんですの?ヒロト」

彼女はさも当たり前のように首を傾げ、弘人の顔を覗き込んだ。

「だだだだって・・・!!」

「?」

弘人は姫香の顔が直視できずに目を背け、姫香は逆に彼の顔を覗き込もうとする。
好葉は「あはは」と笑い、凛は「若いな」と見守り、ほとりとほたるは「「姫香ちゃんてば」」と軽く頬をピンク色に染め、総一郎は「まったく・・・」と大きく溜め息を吐いた。

「相手にしてられないな・・・。俺はもう帰る」

総一郎は言い、机に広がっていた書類をてきぱきと集めると、さっさと生徒会室を後にして行った。
弘人は姫香に追い詰められ、窓辺に寄ると、そこからふと外を見て「あ」と呟いた。

ふと見えたのは、総一郎と可愛らしい少女だった。
見るからに仲が良さそうで、普段笑わない総一郎の表情は柔らかく、優しい。
そして少女も本当に嬉しそうに、彼に笑いかけている。

「ああ、竜胆 雅(りんどう みやび)さんだな」

横から凛が弘人の視線を辿って言う。

「会長とは許婚同士らしいな。お似合いだけどな」