____________________


「りーんーちゃん、昼飯食おうぜー」

「.......。」


まさかほんとに来るとは。

昼食の時間になって騒々しかった教室が、柚槻の一言で一瞬静まり返った。

窓際の先からバレないように様子を伺うと、手元にはしっかりと購買のパンが握られている。

どうやら朝の言葉は本当だったようだ。


「なー松岡、琳ちゃんどこいんの?」


だめ、教えないで松岡くん。ほんとにやめて。


「伊澄のこと?伊澄なら窓際ん席いるぞー」

「(松岡ぁぁぁぁぁ)」


私の心の叫びとは裏腹に、満面の笑みで居場所を教えたクラスメイトの松岡くん。


本人に悪気はないだろうし、恨むに恨めないけど流石に酷い。


柚槻は松岡くんの話を聞いてキョロキョロと辺りを見渡すと、私の席を見つけるなり真顔で近づいてきた。


「.......なんで返事してくんなかったの」

「嫌だからに決まってんだろ」

「えー、だって琳ちゃん今朝「いいよ」って言った」

「言ってねぇしせめてもっとマシな嘘つけよ」


なんかこう.......話が通じない。犬と会話してるみたいだ。

自分の影をひたすら追いかけ回す馬鹿な犬によく似ている。


「今日さー、風涼しいし外で食お」

「だから一緒に食うって言ってねぇよ」

「じゃあ俺ここで食べていいの?」

「.......。」


ずる賢い。ずる賢すぎる。

柚槻がうちのクラスでご飯を食べると余計変な噂が立ちそうだし、さすがにそれは避けたい。


お弁当と紙パックのジュースを持って、下を向いたまま足早に教室を出た。