出会ったとき、私たちはまだ六歳だった。自分の病気のことなんて詳細は何一つ知らなかったあの頃が、今思えば私の人生の中で一番幸せな時間だったのかもしれない。病院というのは広いようでとても狭くて、そんな世界の中で同い年という共通点を持つ彼とはすぐに仲良くなった。別に鬼ごっこなんかをしていた訳でもないのに、なぜか毎日病院内を駆け回って、そのせいで看護士さんたちには何度も叱られた。それでも懲りずに、私は毎日彼を、木嶋碧斗を追いかけていた。

 大きくなるにつれて知識も増えていくものだ。人間の身体を知り、自分の病気を知り、相手の病気を知る。それから幼いながらに死生観についても考えるようになった。死んだらどこへいくのか、死ぬ瞬間は痛いのか、苦しいのか。きっと世の中の健康な人たちが滅多に考えないようなことだろうけど、私たちは二人でよく考えていた。壮大で深いテーマなはずなのに、どういう訳か彼から聞くそれはまるで日常に転がっている軽い話のように聞こえた。