それから一週間が経った。
 町空くんはというと、今日もいつも通り教室の隅に佇んでいる。

 あの日以来、彼は私に一回話しかけてくることはなかった。


 だからからか、私が町空くんばかり目で追いかけている気がする。

 だってあんな姿を見て……もう影だなんて思えない。
 町空くんは影じゃない。例えるなら、そう……闇だ。闇そのもの。


 闇に似合う黒い瞳に吸い込まれそうな、そんな危ない人。

 あの日見たことを口止めするわけもなく、町空くんは今日もまた、謝罪の言葉しか口にしない弱々しい姿をしていた……はずだった。


「藍原さん」

 町空くんは私がひとりになったタイミングで声をかけてきた。


「な、なに……?」
「今日……その、藍原さんに見せたいものがあって」

 今はいつもの町空くんの姿だった。
 これが本当の姿かわからないけれど、緊張した面持ちで私と話す、私がよく知る町空くんの姿。


「見せたいもの?」
「放課後……本当に、少しでいいから……僕についてきてくれないかな……」


 声が震えていて、緊張しているのがわかる。
 これは演技なのか、それとも……?