「あ、あの、そっちは危ないですよ……!」
「悪い人たちがそっちに……あ、行っちゃった……」

 自然と路地裏のほうに足が動いていた。
 女性たちに止められたけれど、一刻も早く行かないと、もう手遅れな気がするのだ。


「ぐあっ!」
「な、なんなんだよてめ……うぐっ⁉︎」

 路地裏の奥のほうから聞こえてくる、うめき声。
 誰かが殴られているのか、鈍い音がする。

 どうか間に合って──


「……え」

 その光景を見たとき、私はその場から動けなくなってしまった。

 それは一方的に殴られている複数の男たち。
 何人かは地面に倒れている。

 気絶している者や、腹部に手を押さえて呻いている者まで。


 そんな複数の男たちをたったひとりで相手にしていたのは──


「まち……ぞら、くん?」


 思わず名前を呟く。

 一方的に殴る蹴るを繰り返している、同じ学校の制服を着た男。