あなたとなら(仮)

「ママ!今日秋ちゃん家に行くって」

「いや、言ってないって!」

「こんにちは、花楓と一緒にいてくれてありがとう。良かったら、ご飯食べていく?」

花楓の母(桃花さん)はハーフアップに結んでいて、小柄だ。花楓は母親譲りの髪色と目の色をしているがよく分かる。

「いや、それは…」

「迷惑じゃないからどうしたいか教えて?」

誰かに決めてもらうのではなく、自分の意思で決めさせてくれる。

ふっ、僕の親とは大違いだ。

「……家に帰りたくない、から、お邪魔します」

「ふふっ、いらっしゃい。
一応親御さんに連絡したいんだけど、電話番号分かる?」

「………連絡しなくて大丈夫です。どうせ今日も帰ってこないので…」

この話はしたくないから、少しきつい言い方をしてしまった。

「そう…分かったわ。それじゃあ行きましょうか!」

それをわかったのか、何も聞かずに花楓の家まで話しながら歩いた。

「お名前ちゃんと聞いてなかったわね。秋くんでいいの?」

「あ、いえ。この季節の“アキ”というか漢字ですが、呼び方は“シュウ”です。貝塚秋と言います。」

「あらあら、ごめんね。じゃあ秋くん
いらっしゃい」

たわいもない話をしているといつの間にか着いた。普通の一軒家だ。