一人暮らしが始まった。

 陸斗と暮らしている時はシングルベッドでふたり一緒に寝ていた。くっついて寝られるから、あの時は、あの狭さが心地良かった。

 仲が良かった頃は、毎日彼の胸元に顔をうずめて、彼にぎゅっと抱きしめられながら眠っていた。

 温もりを思い出すだけで、泣けてくる。

 最後はあんなに険悪な雰囲気だったのに、思い出すのは、笑いあった日々の思い出ばかり。

 一人で暮らし始めてから二週間後、彼からLINEが来た。

『シュシュと化粧水、家に忘れてるよ? 届けよっか?』って。

『新しいの買ったから、大丈夫』

 本当は、会いたくて届けてもらおうかなって気持ちもあったけれど、断ってしまった。

『なんか困った事とかあったら言ってよ?』

 彼からの返信が早い。

『大丈夫だよ』

『おやすみ』

『おやすみ』

 それから、寝る前に『おやすみ』ってLINEが彼から来た。
 
 彼はきっと、離れた事に後悔し始めている。
 私もまだ、後悔や未練……色んな気持ちが心の中でぐちゃぐちゃに絡み合っている。

 私は普段あまり思っている事を言えなくて、急に爆発しちゃうタイプの人間だった。しかも言葉じゃなくて態度で。やっかい。

 もっと言葉で伝えれば良かったのかなって、今になって反省した。

 私から別れを切り出したのに、後悔ばかりしていた。今からでも会ってきちんと話せば、あの頃みたいに戻れる?

『もう一度会って、話がしたい』

 私はそう言葉を打ったけれど、送信ボタンを押さずに消した。

 送ったら、駄目だ!

 ずっと別れずにいたとしても、もしも会ってまた付き合ったとしても、上手くはいかないと思う。

 お互い外から見た性格は正反対に見られてそうだけど、実は二人共、我が強すぎて、反発しあうし、同じ事を繰り返すと思う。

 お互いに幸せになれないんだ。

 何か、LINEの返事をしたくない気持ちになって、初めて私は既読スルーをした。