Screw driver

「何をさっきからニヤニヤしてんだよ、気持ち悪りぃな」

椅子に座っていた美月の頭が軽く叩かれる。美月が顔を上げれば、同僚の前田哲（まえだてつ）が怪訝な面持ちで美月を見ている。

「叩かなくてもいいでしょ！今日の夜の予定を考えてたの」

「予定って何だよ？お前、恋人いないだろ？合コンか？やめとけよ、そんなところ行くの。どうせお前のことだから変な男に捕まってーーー」

何故か焦ったような態度でベラベラと喋る哲に対し、「セクハラで訴えるよ！」と美月が言うとようやく哲は口を閉ざす。美月はため息を一つ吐き、言った。

「あたしの今夜の予定は、久しぶりにバーに行って飲もうかなって思ってる。それだけ」

「バーってどこかバーだよ」

「Hazy」

「聞いたことないバーだな。俺も行っていいか？」

「ええ〜」

哲の頼みに美月は顔を顰める。「Hazy」は、お酒好きな友達にさえ教えていない美月にとって特別なバーなのだ。特に同じ職場の人間にはバレたくない。