「そうだったんですか!すいません、なんか。」



松田さんはまた手を動かし始めた。



すいません、なんか。


って、
覚えてなくてすいませんってことだよね。





ガーン。






まあ、当たり前かあ。


私だってお客さん全員の顔を覚えているわけじゃないし、


よく行くお店の店員さんの顔も全員をいちいち見たりしない。




私が松田さんを知ってるのは、
私が松田さんを覚えようってしてるからだ。




「また本屋にも行くんで、またこっちにも来てくださいよ。」

松田さんは優しい笑顔でそう言うと、

私にストラップを包んだ小さな袋を手渡した。




『はい。』





なんか……嬉しいな。

次会うのが楽しみ。




次は、覚えててくれるよね?