結局、私は龍二の言葉に頷くしかできなかった。
 学校に着くまで……ううん、着いたあとも鼓動は激しく私の心を乱していた。

「おはよう〜、愛しのクラスメイトたち。今日の僕は遅刻しなかったさ」
「きゃー、龍二様。昨日は突然いなくなって、私たち悲しかったんです〜」

 教室に入った途端、龍二に詰め寄る女子生徒たち。
 私には見える、キャキャンとシッポを振りながら、私の龍二にちょっかいをかけていた。

 ──ん? 私の龍二?

 付き合ってるとは言え、私は龍二に恋愛感情なんて……。
 そもそも、恋愛感情って何かしら。そんなものは私に存在しないはず。中学生のときもそうだった。当然、それ以前から……。あれ、そもそも中学生の記憶がない。

 ついこの間までは中学生だったのに、なんで思い出せないのよ。そんな、これって……若年性アルツハイマーということなの。

「マーイハニー、深刻な顔をしてどうしたんだい〜?」
「ふぁっ!? り、龍二、いつの間に近づいたのですかっ」
「影より忍び寄るのが得意なんだよっ」
「それって、ストーカー……。といか、あの女どもはなんですの? 龍二も満更ではないように、見えましたけどねっ」

 なんで、どうして……。
 イライラする、なんだか心にモヤがかかってる。私の身に何が起きてるのよ。

「ごめんよ、ハニー。でも、嫉妬するハニーもステキだよっ」
「し、嫉妬ですってっ! 私は嫉妬なんかしませんし、だいたい、なんで龍二なんかに……」

 嫉妬……なのかしら。ううん、違う、違うに決まってます。そのような感情を抱いたことなどありませんけど、断じて嫉妬ではありませんから。

「もう、ハニーはツンデレなんだから〜。でも安心してよ、僕が心を許すのはハニーだけなんだからさ」
「べ、別に私は……」
「ツンデレなところも、きゃわいいよね」

 龍二のひと言で、収まったはずの鼓動が再び激しくなっていく。
 歯の浮いた言葉など聞き飽きてるはずなのに。
 どうして……なの、同じ言葉なのに、どうして龍二だとなんで私の心が乱れるのよ。