「龍二よ、なぜ、妾に頭を垂れるのじゃ。妾はお主を一度は殺そうとした者であるぞ?」
「ええ、知ってます。ですが、エム女王は、神楽耶のお母様でいらっしゃいますよね。それなら、母親に認めてもらうのは、人間の道理なのです。この国ではどうか分かりませんけどね」
「むぅ、人間の道理、か。あのとき、あの人に龍二のような覚悟があったらのぉ」

 あのときって、どういうことなの。ひょっとして、お母様も昔、人間と恋に落ちたのかしら。でも、そんなはずないわよね。

 お母様の言葉が、何を意味するのか分からなかった。少なくとも、今の私は、龍二との関係を認められたことで頭がいっぱいであった。

「エム女王、差し支えなければ、その話を聞かせてもらえないでしょうか?」
「龍二、別にそんなこと聞かなくたって、いいじゃないのっ。どうせお母様の言うことなんて……」
「なんじゃ、妾の話を知らないと申すか。地球では有名な話じゃと思っておったがの。確か、地球での話は──」

 その話は私でも知っている。幼い頃よく読んだ昔話だから。当然、龍二も知っているはず。だって、龍二の顔は……目を大きく見開いて驚いていたのだから。

 こうして私と龍二は、この魔性国で挙式をあげ、末永く暮らたのだ。
 私の心には、『キミが何者であっても』、その言葉が深く刻まれていた。