「ハニー、落ち着いてくれよ。この場所は……」
「神社があるという噂の場所。ということかしら? もしくは、神社があったけど、何者かがその存在を消したということかな」
「さすが、マイハニー。正確には、意図的に神社を作り、用が済んだから、その存在を抹消した、だけどね」

 私へ向ける龍二の真剣な眼差し。
 そして、『抹消』という穏やかでない言葉に、私は息を飲み込んでしまう。

「抹消って、どいうことなの。それじゃ、まるで……」

 理由を尋ねようとすると、突然、私に激しい頭痛が襲いかかる。前よりも強力な痛みで、うめき声とともに私は意識を失った。龍二が何かを言ってるのも聞こえずに……。

「アナタ、夢のお告げ通りじゃない。光り輝く可愛い子よ」
「……確かにそうだが、この時代に捨て子だなんて、許せないな」

 何、これ……。私はどうしてしまったの。それに、あの人たちはこの前の……。

 体の自由がきかず、私は瞳に映る男女とその声しか認識できなかった。今が暑いのかそれとも寒いのか、それすら分からず、二人の会話を黙って聞いていた。

「この子、私が育てます。だって、放っておけないですし」
「お前がそういうなら、俺は何も言わないけど。ん、この紙切れは……」
「手紙かしらね。どれどれ、えっと中身は……。」

『名前は神楽耶と言います。どうか、この子をよろしくお願いします』

「神楽耶、というのか。この子の笑顔は光り輝く可愛さだな」
「ホントですね、アナタ……」

 神楽耶でって。私と同じ名前……ううん、たまたまよ、きっとそうに違いない。そうだ、あの人たちの苗字は、お願いその名前を私に教えてよ。

 悲痛な叫びが届くことはなく、私の意識はそこで切断されてしまった。