その瞬間に、心臓が嫌な音を立てる。
2人に全く気づかなかった…………。もしかして、さっきの曲がり角で合流したのかな。
あの後ろ姿って、律貴先輩だよね。
「はぁ?ヤダって言ってんだろ。俺から離れろ」
「えー。律貴のケチ。どうせ帰る方向一緒なんだから帰ってもいいじゃん」
耳を澄ませてみると、確かに律貴先輩の声。隣の女子生徒は、長い髪を揺らしながら律貴先輩に絡んでいる。
あの人、体育の時間で見た人だ。
2人は仲良さそうに並んで歩いている。
…………また、だ。
胸の辺りに真っ黒い、モヤモヤとした気持ち悪い感情が渦巻いている。
苦しくて仕方ない。律貴先輩や、その女の子は悪くないのにそんな感情が私を支配していた。
…………私って、こんなに悪い性格だっけ?
なんでこんなにモヤモヤするんだろう。
自分でもよく分からない。
「ねぇ、律貴ってば〜」



